やぁ、わしはキングスライムだぞぉ。威厳に満ちたスライムの王様だぁ。
もうすでに気づいているかもしれないが、わしのトレードマークである王冠が、少し前から行方不明になってしまったのだなぁ。
一体どこにあるのか、諸君らも探してくれないかぁ。このままだと、わし、ただの太ったスライムだと思われてしまうぞぉ、泣きそうぅ。
へへへ、いいもの見つけちゃったぞ。
これ、たしかキングスライムの王冠だよな。ラッキー。僕にはちょっと小さすぎるかもしれないけど、どう、似合ってる?え、ちょっと浮いてないかって?そんなの誤差の範囲内さ!
ほら、結構似合っているだろ?
……え?それはキングスライムのものだから返してあげてくれって?
なんだいあんた、キングの手下かい?王冠を探してこいって頼まれたんだな?
へへーんだ、返してやらないよ!僕はこの王冠を弟分のレモンスライムにもかぶせてあげるんだい。
うわぁ、ありがとう兄貴!まさかオイラみたいな黄色いスライムが王冠を被る日が来るなんてなぁ。なんだか自分が急に偉くなったような気分だよ。レモンスライムで一番の出世頭はオイラだね。似合うかい?
ああ、あんたか。キングに頼まれて王冠を探している人は。……しょうがないな、名残惜しいけど、返してあげ……うわぁぁぁ何をするんだこいつ!剣なんか危ないじゃないか!!
フフン。ボクは勇者スライム。ボクはいずれ世界を救うんだ。そんなボクだからこそ、この王冠はふさわしいんだよ。
なんだキミは。え、相手から無理やり奪うのは到底勇者とは思えないだって?何を言っているんだい、本家の勇者たちだって、人の家に上がり込んで物を盗っていっているじゃないか。勇者の正当な権利なんだよ。
なに、それにしたって強奪はよくないって?そんなことは勇者たちはしていない?ムムゥ、うるさいやつだ。
え?大体既に勇者の冠を被っているのにさらにスライムキングの王冠を被るのはファッションセンスとして間違っている?……う、うるさいな!そんなに言うなら、返してやるさ!
って、うわぁ、なんだお前は気持ち悪いやつめ!ってこら、王冠返せ!
オレ、王冠かぶれるの、ウレシい。かぶってみたかった。チャンスおとずれた。ダカラ王冠奪った。
……ナンダ、お前は。王冠取り返しにキタのか。そんなことより、ダッテ?ナンダ、一体。ドウシテ、そんな片言なのか?
アア、オレ、本当はスライムじゃない。
うしろ、ボタンある。オレ、機械の体。他のスライムたちとはチガウ。オレは頑張ってもみんなの仲間にはなれない。デモ、王冠かぶったら、みんな近づいてきてくれるかと思った。……ソウカ、こんなことしてもみんなとは仲良くなれないのか……。ワカッタ、オレお前に王冠返す。ゴメン。
ァ、王冠、ない、どこいった?
ピロピロリ~ン
私はみんなのアイドル、エンジェルスライム!どこかではホイミスライムがみんなのアイドルってことになってるみたいだけど、冗談じゃないわ!私こそが真のアイドルよ!だって私が一番かわいいもの!
だからこの王冠も私がもらうの!アイドルの地位だけじゃなくて、クイーンの座も私のものにするのよ!あんなのろまな機械仕掛けのスライムにはもったいないわ!
なによアンタ!え、王冠を返してくれって?いやよ、せっかく手に入れたんだから!キングがかぶっているよりもよっぽど有効的だと思わない?だから絶対返さないわよ!
え、王冠がすでにないって……?ちょっとやだ!どこにいっちゃたの!
はぐれメタルが現れた!はぐれメタルは王冠を被っている!
……。
はぐれメタルは逃げ出した!!キングスライムの王冠を落としていった!
あれ、こんなところに何か落ちてる。うわぁ、これキングスライムさんの王冠だ。ぼく一回かぶってみたかったんだぁ。よいしょ。えへへ、似合う?やっぱりぼくには大きいかな?
きみはどうしたの?キングスライムさんの王冠を返してほしいの?そうかぁ、これがないとキングスライムさん困っちゃうもんね。いいよ、返してあげる。ちゃんとキングスライムさんのところに持って行ってあげてね。
って、うしろ、あぶない!
ピー、ガガガガガ。王冠、カクホ。ミッション、達成率100%。
……王冠、ウレシイ。
キラーマシンは頭部のランプを光らせて喜んでいる!
オマエ、ナンダ。王冠、奪イニキタノカ。ワカッタ、コノ王冠ハすらいむニ返シテオク。安心シロ。オマエハモウ、帰ッテイイゾ。
……。
(キラーマシンの視覚認知機能が誤作動を起こしており、スライム目薬をスライムと誤認。そのままスライム目薬に王冠をかぶせてミッション達成とし、帰ってしまった模様)
……。
(そのまま放置される王冠)
わしの王冠、どこにいっちゃたのぉ?
(文・やなぎアキ)