「名は体を表す」んだよ!だから「いたずらデビル」である僕も、いつもいたずらに勤しんでいるわけさ!ナプガーナ密林をいたずらでいっぱいにするんだ!
今日はどんないたずらをしかけてやろうかなぁ。
なーんて言ってみたはいいものの……本当はいたずらなんかしたくないんだよなぁ。いたずらの先輩、いたずらもぐらさんはすごいなぁ。毎日毎日色んないたずらをしているもんなぁ。穴を掘っては誰かをはめ、穴を掘っては誰かをはめ……たまに取り返しがつかなくなったりしないんだろうか。それに比べて僕は……。
本当はいたずらデビルなんてやめたいんだ。ただのインプとして、ひっそりとデルカダール神殿で資格の勉強とかをしたいんだ。
でもインプ界ではいたずらデビルになれば、将来安泰って言われているもんなぁ。皆がなりたがっているいたずらデビルにせっかくなれたんだし、頑張らないとなぁ。インプ中等学校の成績が優秀なばっかりに、いたずらデビルに任命されちゃうとはね……。
そろそろ今日のいたずらをしなきゃ。どうしよう、噛んだガムを木からつるしておこうかな……。 ああでも、もしこのガムが旅人さんの髪にべったりつくようなことがあったら、かわいそうだな……。そうだ、包み紙に包んだ状態の噛んだガムをつるしておこう。これならぶつかってもくっつかないぞ。あとさっき掘った落とし穴も、落ちる人がいたら困るから看板に矢印を書いてわかりやすくしておこう。
おや、あそこにいるのはインプじゃないか。神殿から抜け出して、こんな森の中で何をやっているんだ?
「へへーん、オイラはインプ。インプだけれどいたずらが大好き。いたずらデビルにはなれなかったけど、そんなこと知らないね。オイラは好きなようにいたずらを仕掛けていくぜ」
な、何をやっているんだ、彼は。あ、あれは僕が作った落とし穴。何をする気だ、彼は。
ああー!僕の落とし穴の中に「うまのふん」を大量に流しいれている!!しかも藁をかぶせて落とし穴を見えなくしているぞ!ああー!看板の矢印を消して小さい文字で何か書いてる!そんなことしたら、看板を読もうとした旅人さんが穴に落ちちゃうじゃないか!そして「うまのふん」まみれになっちゃうじゃないか!!
ひ、卑劣だ……。あれが真のいたずらというものか……。神殿からわざわざ出てくるだけあるなぁ。
僕みたいないたずらデビルには成し遂げられないことを、彼は平然とやってのけるんだな。あ、今度は僕のつるしたガムのところに……ガムに気づいて……包み紙をあけて……あ、食べた。すごいなぁ、噛んだ後のガムを平然と食べるなんて。
「へへーん、オイラはまだまだいたずらをし足りないぜ。もっともっといたずらをして、業界初のフリーランスいたずらデビルになるんだ」
まだ何かするつもりなのか、彼は……。
ああー!マンプクさん(ナプガーナ密林のきこり)の3時のおやつを勝手に食べている!今日は週に一度のドーナツの日なのに!しかもドーナツが入っていた皿に、さっき噛んでいたガムを乗っけて……魔法でドーナツに見えるようにした!
卑劣だ……僕からインプへ、インプからマンプクさんへ、ガムが継承されていく……。
しかも彼、マンプクさんがドーナツと一緒に楽しもうとしていた紅茶に、あんなものを!あんなものをぉぉぉぉぉ!(ご想像にお任せします、好きなものを入れてください)
……よし、僕は決めたぞ。
――――――
こうしていたずらデビルは、インプにいたずらデビルの座を渡しデルカダール神殿に帰っていった。
新しくいたずらデビルになったものは、それからほどなくして勇者と勇者の相棒を名乗る盗賊にやられた。神殿に帰った彼も、日商簿記の勉強をしているときに同じように勇者と勇者の相棒を名乗る盗賊にやられてしまったのだった。
(文・やなぎアキ)
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