就職活動。それは人生を決める戦い(と言いつつ最近は終身雇用の方が珍しくなってきている、気がする)。大学3年にもなると嫌でも意識しなければいけない。
リクルートスーツを買って、就活用のカバンを買って、革靴を履いて……くびかりぞく、就活を始める。
くびかりぞく、インターンに行く
聞くところによると、最近はインターンシップに参加するのはもはや就活において必須だそうだ。
ならば行く。くびかりぞくだってインターンに行く。どこに行くのか、決める。
「フドウサン ノ エイギョ」
営業の外回りに一日中同行する。くびかりぞく、途中で飽きてしまい取引相手の首を狩ってしまう。インターンに行けば選考を有利に進められると聞いていたが、あえなく出禁。くびかりぞくにインターンは厳しい。
くびかりぞく、ESを書く
インターンなんぞに頼らなくても、就活はできる。くびかりぞく、エントリーシート(ES)を早速書いていく。自分のアピールポイント、成功談、失敗談、全力で書いていく。
が、ここで大きな壁が立ちふさがる。
くびかりぞく、字が書けない。
仕方がない、博識なりゅうはかせに代筆を頼む。
アピールポイント:笑顔が絶えない。
成功談:勇者を血祭りにあげたことがある。
失敗談:勇者に血祭りにあげられたことがある。
くびかりぞく、合説に行く
くびかりぞく、業界研究というものを知る。自分の行きたい業界をまず見極める必要がある。不動産業界だけはやめようと決めた。
東京ビッグサイトで合同説明会があることを知る。くびかりぞく、意を決して合説に参加することに決める。行きたい業界を決めよう。
くびかりぞく、初めての東京ビッグサイト。
そして、
くびかりぞく、道に迷う。
りんかい線がくびかりぞくにはわからなかった。
くびかりぞく、グループディスカッションをする
会社説明会かと思ったら突如始まる選考。グループディスカッションに参加させられるくびかりぞく。
何をテーマに話し合うのかも聞いていないまま、なぜかタイムキーパーをやらされる。
くびかりぞく、時計をじっと見つめる。
「くびかりぞくさんはどれが最適な答えだと思いますか?」
進行役から突然のパス。くびかりぞく、困惑。
「オレ、オノガイイ」
何を思ったか、自分にとって最適な武器を答えるくびかりぞく。
「なるほど、たしかに小野さんの意見は課題としてあがっているデメリットを上手くカバーできていますもんね」
なぜか頷くメンバーたち。就活のグループディスカッションでは、主張することより同調することを求められる。くびかりぞく、選考を突破する。
くびかりぞく、集団面接を受ける
面接官2人に対し、就活生は4人。くびかりぞく、初めての集団面接。
「私は居酒屋のバイトリーダーとしてシフト作成を任され~~~」
「私はサークルを立ち上げて、サークル長として組織をまとめ~~~」
「私は大学の研究室で、経済を支えるためある統計に沿って~~~」
くびかりぞくは、バイトもサークルも勉強もしていない。何をアピールすればいいかわからず、うつむくくびかりぞく。
「ではくびかりぞくさん、学生時代に打ち込んだことは何ですか?」
「オレ、クビ カッテタ。ズット」
アピールするためのエピソードに派手さも意外性もいらない。が、首を狩るという独特すぎるエピソード。個性を認める寛容すぎる企業。くびかりぞく、またも選考を突破する。
くびかりぞく、役員面接を受ける
くびかりぞく、とうとう内定まであと一歩。
いきなり役員との面接。あまりの緊張に、斧を握る手に力が入る。ここまで来ることができたくびかりぞくに唯一の誤算があるとすれば、この会社が何をやっているか知らないところだ。
「あなたはどういうキャリアプランを持っていますか?」
「オレ ノ モッテイル オノ コレダケ」
「……今勉強している言語とかありますか?」
「オレ シャベッテル。コレシカ シラナイ」
「……資格とか何か持ってます?」
「ウシロ ハ ミエナイ」
くびかりぞく、さすがにお祈りされる。お祈りは勇者がするものではないのか。ということは、あの会社は勇者の巣窟。
くびかりぞく、仲間と共に会社を襲撃。
「オレ シュウカツ マタ ガンバル」
くびかりぞく、がんばれ。
(文・やなぎアキ)
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