働きアリには、2割はよく働き、6割は普通に働き、2割はサボっている、という法則がある。
特に理由はないがこの働きアリの法則に、急にさまようよろいを当てがってみたいという衝動にかられた。誰にだってそういうときはある。
つまり……
さまようよろいのうち、2割がよくさまよい、6割が普通にさまよい、2割はまったくさまよわない。
さまよわないよろい、ここに爆誕である。
正直、よくさまようよろいについても気になる(きびきび動くのかそれとも行動範囲がとてつもなく広いのか)が、ここはやっぱりさまよわないよろいについてもうちょっと考えてみたい。
さまよわないよろいは、さまよわない
「さまよう」の意味は、「あてもなく歩き回る」だろう。
最初、さまよわないよろいは、その場から動かないのではないかと考えていた。しかしどうもそうではないらしい。
特に目的もなく歩き回る、を、しない。
そう、目的があるのならば歩くのだ。
例えば、スーパーに買い物に行ったり、映画を見に映画館に行ったり、デートをしに水族館に行ったり…………いやいやいや
さまようよろいはデートなんか行かないから。
つい決めつけてしまった。だがさまようよろいがデートをしている姿はちょっと想像できないししたくない。
それでは一体どういうときに「目的を持って歩く」が発動するのだろうか。
食事……?そもそも鎧なのだから食事は必要なさそうだ。トイレ……?そもそも鎧なのだから排泄の必要はなさそうだ。睡眠……?その場で寝ろ。
あれれ~?これってもしかして~
さまよわないよろい、やっぱり全然動かないんじゃない?
せいぜい勇者一行とエンカウントして戦うときくらいではないだろうか。さまよわないよろいでもさすがに戦うことくらいはするだろう。
これでもし勇者との戦いもおざなりになってしまったら、それはやるきのないよろいである。
モンスターには色違いがつきものだ。やるきのないよろいは亜種だろう。あと他にはフドーアーマー(不動の鎧)とかがいる。 秒で思いついたにしては悪くないネーミングだ。
さまようよろいの2割くらいはこんなよろいなんだ、きっと。
さまよわないよろいも、いつかはさまよう
だが勘違いしないでほしい。そもそも働きアリの法則にあるさぼっているアリはずっとサボっているわけではない。よく働くアリが疲れて休みだしたら、交代でサボっていたアリが働きだすのだ。
さまようよろいもそうだろう。先にさまよっていたよろいが疲れて休みだしたら、さまよっていなかったよろいが次はさまよい出すのだ。ずっとさまようのにも体力がいる。彼らにもこの働きアリのシステムは必要だろうし恐らく導入しているはずだ。
やるきのないよろいもフドーアーマーもいない。せっかく考えたけど。
そうなると、新たな不思議が生まれる。さまようよろいはさまよっているのだ。近くに全員がいるわけでもないのにどうやって、先程までよくさまよっていたよろいが休みだしたという情報を共有するのだろうか。GPSを使って管理しているわけでもないだろう。
もしかしたら、彼らは全員思念かなにかで繋がっていて、お互いの行動を把握しているのではないだろうか。魔物なんだしそれくらいはできそうだ。
ホイミスライムをよく呼ぶので、多分ホイミスライムとも繋がっている。
Wi-Fiみたいに見えないけれど魔物たちの思念が飛んでいるのだろう。魔物ネットワークすごい。
しかしやっぱり、よくさまようよろいが気になる。あてもないのに俊敏に歩き回っているとしたら面白い。
(文:やなぎアキ)
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