町や城の人たちは旅に役立つ情報をいつも私たち冒険者に教えてくれます。非常にありがたいことです。
さあさっそく城の人から情報を収集していきましょう。旅への第一歩はそこから始まるわけですから。
勇者たるもの些細なことも見逃しません。子供の話もしっかりと聞くのが勇者というものです。お城にいる子供なんてただものじゃないに決まっていますから。いい歳しているのに未だにお城に入ることが叶っていない大人なんてたくさんいますしね。
やぁ、少年、お兄さんとお話ししよう。大丈夫、お兄さんは怪しいものではないよ。
お?なんだ、この少年は。そしてなんだその質問は。初対面の年上の人に対してこの物言いは、いくらお城の子とはいえマナーの教育が行き届いていないのでしょうか。
大体何について言っているのでしょうね。詳細を言わずに知っているかどうかを聞いてくるとは......まぁ子供ですから、その辺は多目に見ましょう。
「なにを?」と聞きたいところですが、残念ながら不自由な二択しか与えられていないので、ここは「いいえ」と答えておきましょう。
なんだかわからない状態で「はい」と答えるのはよろしくないですからね。外国人に話しかけられて、なにを言っているかわからないけれど「OK,OK!!」などと言ってしまえばエライ目にあいますからね。
な、なんですと。お、憶測で恐ろしいことを仰るお子さんですね......。不確定であるにも関わらず不穏な情報を流すのはいかがなものかと思いますが、この少年には悪気はないのでしょう。悪いのはこの少年に噂を吹き込んだ周りの大人たちです。
それにしても、滅ぼされた町ですか。これは有力な情報です。これが真実にせよそうではないにせよ、いずれは訪れることになるのでしょう。よかった、見栄を張って「知ってるよ!」とか言わなくて。
さて、ちなみにこれ、「知ってるよ!」と答えると少年はどのような反応をするのでしょうか。
やぁ少年、お兄さんとお話ししようね。
それにしてもこの会話の始め方はどうなんでしょうかね、本当に。
では「はい」と答えましょうか。
お?なにがだ?
いえ、わかっていますよ、魔物に滅ぼされた町があるかもしれないことに対して、ビックリしているのでしょうけれども。
しかし、「知ってるよ」と言ってきた相手に対して、自分と相手の認識合わせを十分に行わないままに感覚を共有しようとは、なかなかの強者です。君が思っていることと違ったらどうするんだ。
まぁ子供ですし、その辺の高度なコミュニケーションはまだ身に付けていないのかもしれませんが。
しかしあれですね、滅ぼされた町があるかもしれないということに関して、嬉々としているかのように驚きを示しているわけですよ、彼は。遠くで起こっている悲劇というのは、なんだかドラマに写ってしまうものです。
お城での情報収集も終わったので、次は町で話を聞きましょうか。お兄さん、お兄さん、僕とお話ししましょう。
ま、またしても。
さきほどは相手が子供でしたから、会話の始め方が唐突でも仕方ないかなと思いましたが、あなたいい大人でしょうが......。
はっ、それとも......この唐突な質問とこちらの不自由な二択を利用して、言葉巧みに話に引き込んで、得たいの知れない高価な壺でも買わせようという魂胆ですか?
騙されませんよ、勇者たるもの壺を割ることがあっても買うことはあり得ない!!
とは言っても、なんのことだか気になるのでここはやっぱり「いいえ」と答えておきましょうか。
で、でた、憶測。
事実確認をしていない情報を親しくもない人に言うのはどうなんでしょうか。SNSでも日夜、事実なのかも疑わしい噂が飛び交っています。この人がTwitter等をやっていたら間違いなくこれを呟いていることでしょう。
とはいえ、これも有力な情報ですね。まほうのカギが買えるのであれば、行けるところがグッと増えるはずです。
壺、買わされなくてよかった。
さて、この人にも「いいえ」と言ってみたらどうなるのでしょうか。
この食いぎみな感じ、言いたくて言いたくてしょうがないんでしょうね。ドラクエの世界にもSNSできるといいね。
それにしても不自由な二択ですねぇ。知ってますよっと。
なんだこいつ。
子供じゃないんだからあからさまにがっかりしないでほしいですね。あとこの人もさきほどの子供と同じで、認識あわせもしないままに勝手に同じことを考えているだろうと思っているわけですね。大人でもコミュニケーション力が子供と同等だ。
そんながっかりされてもそもそもこの二択しかないんじゃこっちは。
若干唐突な質問に疲れてきました。話したければ勝手に話せばいんですよ......。
さーて、ややイライラしながらもガライの町にやってきましたよ。さっそく話を聞いていきましょう。
聞くな!勝手に歌え!!!
(文:やなぎアキ)
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