ドラクエ世界には、トラが存在する。
トラの皮を剥いで身に纏わないと、なれない職業(モンスター)も、ある。
トラはアジアにのみ生息する生物で、なんといっても絶滅危惧種だ。
多くのアジア諸国でトラは強さの象徴であり、その模様の美しさは様々な美術品に取り入れられた。
現在、全てのトラはワシントン条約で保護されていて、様々な保護団体がその生態系を守ろうと日々奔走している。
そんななか、破天荒な行為に及んでいる可能性があるのが、この怪人である。
貴様、トラの毛皮をどこで仕入れた……!
鋭い爪による強力な一撃よりも、この怪人が及んでいるであろう悪業に注意したい。
ほとんど全身トラで包んでるが、この着ぐるみの完成度……多分、作る最中何度も失敗作を捨ててこその賜物なはず……
とらおとこA「クソ……こんなんじゃダメだ……!またやり直しだ!」
とらおとこB「もう(トラの)ストック切れたからまた狩りに行かないとダメだなぁ」
とらおとこA「クソ……!こんな格好じゃ人を襲いに出られない……!早くトラを狩らなきゃ!」
きっと、こんな感じだろう。妥協は許されない。
ちなみにとらおとこ Aはトラを被っていないから、正確には「とらおとこ」とは呼べない。ただの「おとこ」だ。
きっと、こんな会話もあるだろう。
とらちゅうがくせい「かーちゃーん!このトラもう小さいよ!」
とらかあさん「もう!あんたがピッタリのがいいって言ったんでしょ!今度はお母さんの言う通りブカブカのトラで我慢するのよ!!!」
トラの下にはインナーを着ているのだろうか。
ノーパンでトラを被っているのだろうか。
ここで思うのが、なぜトラが勇者御一行を襲ってこないのか、ということ。
野営やなんかをしているのだから、多少は遭遇することもあるだろう。
人とトラ、互いに見過ごせる存在ではないのでは?
時には衝突もあるのでは?
そうなれば野生の動物相手とは言え、もしや……
それともやはり、勇者たちは絶滅危惧種をどうにかやり過ごしてあげているのだろうか。自然保護をしながら、世界を救うつもりなのだろうか。
さすがは勇者御一行、マスコミから攻撃される隙を与えない。
いい勇者ってやつは、動物に好かれちまうんだ。
それにしても、魔王軍も魔王軍だ。
トラを仲間に入れたらかなりの戦力アップのはず。見過ごせない、強力な武力に違いない。
どうせ魔王軍側は人材不足なのだから。
何故なら……
タマネギにすら魔法をかけて仲間に引き入れているから。
タマネギを味方に出来る魔王軍……まさか、トラに魔法をかけられないワケもなく……
まさか!
もしや!
魔王軍も絶滅危惧種に配慮している……?
だとすると、魔王軍の一味である「とらおとこ」の毛皮は、昔とちがって化学繊維を使っている可能性がある……!?
あえて伝統的な部族のスタイルを維持させつつ、絶滅危惧種への配慮も欠かしていない……!?!?
──伝統と文化、そして生態系。
魔王軍も勇者も、己の政治的な主張は別として、最低限守るものが、ここにある。
(文:OGTキシン)
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